Hospital (3/3/1999)
それは全く突然の出来事でした。金曜の夜になんだか前歯の根のあたりが痛いなぁと、最初はそんな感触だったんです。それが…ついには手術までする羽目になってしまいました。
2月26日(金)
(今思えばこの日に病院に行っておけばよかったんです。。。)
ここ2,3日時々前歯の根が傷みます。虫歯の痛みと同じ痛みですが、虫歯があるようには見えませんし、何しろ根っこの部分なので、「はて?」という感じでした。だんだん痛みが強くなってきて、みなさんも覚えがあるでしょうが、あの歯痛とか頭痛とかいうやつは、なんにもできなくしてしまうもので。。。
痛み止めを飲む事にしました。バファリン登場。日本から救急セットなるものを持ってきててよかった。普段ほとんど薬の類は服用しないせいか、たまにバファリンを飲むと、ものの見事によく効きます。この日も最初夕方飲んだときはそれで収まったのですが。。。
夜中にまた痛みが復活。薬切れか。また飲みます。もうミニ救急セットのバファリンでは間に合わなくなってきました。。。
いえ、病院にいきゃぁいいんです。しかし、まぁこれもなんと申しますか、不思議な心理状況があって、いったこともない病院に、しかも英語で病状を説明する自信もありませんし、、ついついおっくうになってしまいます。ずきんずきん痛いんですとか言えればいいんですが…^^;
この日は、次のクラスの発表のためにチームミーティングの日でした。一応今日まで調べた文献等を持ち寄って、夕方から図書館で議論を。。。やるのですが、もう痛くていてもたってもいられなくなって、ミーティングは早々に切り上げさせてさせてもらいました。
2月27日(土)
Pharmacy
薬局に痛み止めを買いに。幸い近所に薬局はたくさんあります。痛み止めはアスピリンといえば通じました。「そこの19番コーナーよ」と教えてくれた棚には、一列上から下まで、右から左まで、ぎっしり痛み止めの薬のオンパレード。まったくなにがなんだか。。。とりあえず、友達に教えてもらった、TylenolとAdvilという有名どころを買いました。これにしたって、やれ夜用、やれExtra
Strength(強化版)だのほんとに目移りしてしまいます。

急遽日本から送ってもらったバファリンと
近所の薬局で買った痛み止め
日本の薬よりはきつい。というのはどうやら本当の用です。バファリンの効き目があまりないところに、こいつらは効果てきめんでした。
しかし、長くは持ちませんでした。激痛。どうやらだんだん腫れてきた模様。もう背に腹は代えられないと、学校のHealth
Centerと呼ばれる学校内病院に行きました。
学校のHealth Centerは休日でも看護婦がいます。
(看)「あぁ、あなたは初めてね。最初にね、いろいろ質問があるの」
(私)「はい。(アレルギーとかなんとか。。)」
(看)「今まで薬でアレルギー反応は?」
(私)「いいえ。」
喫煙や手術の経験などまではよかったのですが、だんだん怪しげな質問になっていきます。
(看)「Are you sexual active ?」
(私)「え?Sexual Activeってどういう意味ですか?」
(看)「今誰かとセックスしてますか?という意味ですよ。」
ほう。それならそう直接聞いてくれ。「Sexual Active」なんてお上品ないわれ方しても。。。:-p
(看)「車に乗るときはシートベルトはしてますか?」
(私)「へ?」
いや、もちろんしますけど、それとこれとなんの関係が????
一通り答えおわると、その問診票にサイン。なんでもかんでもサインです。
まず体温を測ります。口の中につっこむタイプ。96度と華氏で表示されてるので、いまいち実感がわきません。耳を看ます。鼻を看ます。口を開けて。。。一通りみて、
「うーん。よくわからないわ。とりあえず痛み止めTylenolを飲んで。月曜日に先生が来るから予約を入れとくわね。」
いけません。これじゃぁ話になりません^^;
が、仕方ない。予約だけ入れてその日は家に帰りました。
アメリカの病院というのは、そりゃもう予約は必須なんだそうです。日本だと飛び込みといいますか、突然病院にいって、というのも「アリ」ですが、こちらではそれはまず難しいようです。
家に帰ろうとしてふと気が付くと、「あ!」。家の鍵をもってでるのを忘れてきました。もう、ボケボケです。アパートの管理事務所。ここは土日は休みです。ああ、どうしよう。外は冷たい雨。歯は疼く。もう気分は最悪です。
そうこうしていると、たまたま近所のおばあちゃんにであって、「あら、HIROSHI、その顔どうしたの?」てな話になりました。実はこれこれしかじかこうこうで…。このおばあちゃん、このアパートに住んでもう20年近くになるようで、もう歩くアパートの「主」です。このおばあちゃんの知らないことはありません。早速、アパートの整備をしているおじさんをポケベルで呼びだしてもらって(なんでそんな番号知ってるんだ!?)、合い鍵を持ってきてもらえることになりました。待っている間はそのおばあちゃんの部屋でちと世間話など。
住人の悪口。娘の話。最近の笑い話。Tylenolは効かないわよ。10数年連れ添った隣人が先週の日曜日に亡くなった話。云々。日常的なくだらない話、しかし心は和みます。
2月28日(日)
痛くて眠れません。身の置き場がないといった感じです。もう一度
Health Centerへ。いえ、もう看護婦には用はないんですが、近くの土日でもやってる病院を紹介してもらおうと思って。しかし、あえなく、一通りのおきまりの診断をされて、やっぱり月曜日に先生がいるときに来いといいます。
病院の紹介も含めて、はやり看護婦と先生では権限が全く異なるようです。
夕方、友達に近くの救急病院に連れていってもらいました。ERというやつです。日本でもテレビドラマで結構有名なのではないかと。(このときすでにもう自分で車の運転はできなくなっていました^^;)
Emergency Entrance。テレビドラマのような激しいドラマチックな光景を想像していましたが、あちらはシカゴ?ここはもっと田舎でした^^;
待合室に受付の女性が一人。
「保険証を見せてください」
救急病院といえども、すべてはここから始まる模様です。救急車で意識不明の重体患者を運ぶときも、ポケットからまず保険証を確認するそうです。それによって運び込まれる病院が違うのだとか。。。じゃぁ、保険に入っていない場合は?
日本だと、とにかく現場で医療費(現金)を要求するという姿勢は経験したことがありますが、これはあくまで会計上の話であって、診察や処置がされないということはないと思いますが、アメリカはそうでもなさそうです。最低限の医療を全員にという意味では明らかに日本の方が進んでいるように見えます。
しばらくして先生に看てもらいます。体温計は最近流行の耳に押し当てるタイプ。しかしやはり、これといった原因はわからないようで。とりあえず痛み止めと化膿止めの抗生物質の処方箋を書いてくれました。これを薬局で買いなさいと手渡されます。処方箋といっても単なる10cm四方くらいの小さな紙切れで、その辺のメモ用紙のようなもんです。書いてあるのは薬の名前とか量とか。あと、先生のサイン。
しかし、この何気ないメモ用紙が威力を発揮します。日本でいえば、病院で調合してもらえる薬、が手に入る唯一の切符なのです。
日曜の夜。さすがに薬局といえども閉まっている時間帯です。先生に教えてもらった、24時間あいている隣町の薬局まで行ってその処方箋と保険証を出します。薬にも保険は効くようです。調合には時間がかかるようで15分くらい待たされました。いや、その実は調合といっても錠剤を指定された個数、ケースに入れて出すだけでそんなに時間はかからないのですが、やれ、保険の番号や、患者の住所氏名など、全部POSのような機械でオンライン処理しているらしく、薬のラベルも見事に印刷されてでてきます。費用は数ドル。友人と話したのですが、おそらく全体の2割負担だろうという話でした。

処方箋によって調合された薬はこんな入れ物に。
服用方法もラベルに書いてあります。

ふたには簡単にはあけられない工夫がしてあります。
市販の薬も同様です。
3月1日(月)
朝いちで学校のHealth Centerの予約をいれてありました。本当は授業があるのですが、もう授業どころの騒ぎではありません。
体温、血圧、過去の診察履歴を看護婦が確認して、診察室へ。そこで先生を待ちます。
壁には世界10カ国語くらいでかかれた医療用語の一覧表。当然日本語も入っています。先生が、「おはようございます」と日本語の挨拶を交えて入ってきます。
一通りカルテを看て、口などを看て、それから、昨晩のERでの治療の話。昨晩の治療の経過は、1枚紙をERがくれていたので、これを先生に出せば話は早いです。どんな薬をだしたかとかどういう指示をしたかとかが細かくかかれています。
これを見た先生、やばいと思ったのでしょう。
「抗生物質を12時間置きじゃなくて6時間置きにのみなさい。今すぐ一つのみなさい、はい、これ。それから、病院を紹介するから今すぐいきなさい。ちょっと待って、電話で連絡するから。。。よし、OK。地図はこれ。ん、君が運転しているの?場所はわかる?」
といった調子です。話が早いです。ちょっとその慌てぶりにこちらが心配になってしまいました。
車で10分ほど。町はずれの病院は、歯医者とは書いてないんですが、口内(Oral)とか外科手術(Surgery)とか書いてあります。。。げ!
先ほどの電話が聞いているのでしょう、待ち時間もなくすぐ通してくれて、まずはレントゲンという話に。
設備はもろ、歯医者です。例の椅子にドリルたち。ただ違うのは、建物が普通の一軒家と同じで、病院全体の雰囲気がさながら雪国のペンションみたいな作りであること、照明器具や、洗面台などの無機質なものが少ないこと。そして患者、先生、看護婦も含めて皆、ファーストネームで呼び合うこと。なんだか安心します。
いろいろ見て、また薬を出してくれました。明日の朝9時に来なさいとのこと。確かに膿を出すとはいっていたのですが、このときはまさか…
予約のカードをくれました。先生の名前と時刻が書いてあります。おもしろいのはこのカード、シールになっていて、「カレンダーに貼ってください」とあるのです。妙に親切です^^;
アメリカって、時々凄い親切な国だなぁと思うことがあります…
3月2日(火)
腫れは目にまで及んで、もうおいわさん状態です。痛みは、痛み止めでなんとかごまかしますが、それでも数時間で切れて目が覚めてしまいますし、食事ももともとできないところに薬ばかり飲むので、胃の調子もなんだか変です。日本だと、痛み止めとかと一緒に胃腸薬もくれるんでしょうが、こちらはそういうのはありません。
朝9時にいきました。今日は先生が透明のマスク(溶接工がしているような仮面)をしています。なんかやばい雰囲気だなとは思いました。^^;
いきなり切開手術の説明です。これから、何々のためにどこをどう切って、こういう処置をします。その後はこういう経過になると思われるので、この薬をこう飲んで、こういう効能があるので、こうなって直っていきます…云々。
いわゆるインフォームドというやつでしょうか。全部患者に教えてくれます。正直専門用語も多いので、細かく全部はわかりかねますが、大筋は理解できます。
「なにか質問は?」
いえ。もう、覚悟はできました^^;
どうぞ、やっておくんなまし。
「じゃぁ、ここにサインを」
なるほど。そういう仕組みです。これで患者からの訴えの可能性を減らすことができますし、これじゃないとアメリカで医者はやっていけないでしょう。
手術そのものはものの5分くらいだったでしょうか。がーっと麻酔して、がーっと切開して、、、麻酔してるとはいえ、ものすごく、本当にものすごく痛かったです。今思い出しても体が固まります。
術後はガーゼを当てて、おしまい。縫合はしないようです。まぁ、新陳代謝の激しい口の中ですから必要ないんでしょう。
術後のインストラクションを時間をとって教えてくれました。ガーゼは2時間後にはずして。消毒はお湯に塩を入れて2時間置きに。薬は…云々。ご丁寧にスペアのガーゼもくれました。ちなみに、この口の中に入れるガーゼ、メロンの香りがします。なんでもかんでもフレーバー大好きのアメリカ人。ガーゼも無味無臭じゃいやなのかしら:−)
友達にこの話をしたら、
「イチゴ味とか選べないの?」
さて、そんなこんなで、いろいろありましたが、この手術を境に、容体は回復の方向に向かいました。次は金曜日に来いとのことです。
学校
運が悪いことに、今週は試験週間です。しかし、この調子ですから、試験もへったくれもありません。教授にメイルで事情を話して、多くの寛容な先生は個別に融通を利かせてくれます。この辺は、一斉受け身体質の日本教育とは異なり、顧客ニーズへの柔軟対応が根本的に浸透しています。
たしかに日本と比べて、きめ細やかさがなかったり、いい加減なところも目には付くのですが、一度なれてしまうと、このYes/Noのはっきりした医療スタッフの対応は心地よいものです。なんといっても、また次あの病院にいくのがおっくうには感じませんから。そういうオープンといいますか、誰でも入っていける人間味というものを感じた1週間でした。
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