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Linux (4/6/99)

友人から手紙をもらいました。最近のLinux騒ぎに関するものです。「これはどういう動きなのか?今後どうなっていくのか。」という話です。

私自身は、最初にUNIXを触ったのは、もう15年前。それまで、DOSやらBASICやら、アセンブラの世界しか知らなかった私には、UNIXというOS、ウィンドウを使ったグラフィックユーザインタフェース、ネットワークを通したコミニュケーション。それらすべてがとても魅力的で、みるみるうちにUNIXの虜になってしまったような気がします。

そのころは、パソコンなるモノを小馬鹿にしてました。インターネットって知ってる?メイル出せる?ニュースは?そのころすでにPC-VANやニフティなどのパソコン通信が盛況を見せていましたが、インターネット+UNIXの環境にどっぷりの私にはどうも、おもちゃに見えました。

ツールや、システム。ソースコードは、世界中に無限と思われるくらい転がっている。すべて無料です。星の数ほど散在するFTPサーバから自分の必要なモノをダウンロードして、コンパイルして、そして、研究に、遊びに、使う。バージョンアップがあれば逐一バージョンアップし、気に入らないところは自分でソースコードを修正する。隣の学生よりも、ちょっとでも使い勝手のいい環境を目指して、世界中からプログラムを集め、「ほーら、いいだろー」と自慢する。そういう世界でした。

しかし、それはインターネットという極一部の世界の話。UNIXという極一部の研究者、エンジニアの世界での話でした。今や、インターネットは世界の経済基盤。仕事はもとより主婦から子供まで、インターネットでメイルの時代です。

今、Linuxに関して起きている事も、私に言わせれば、15年前となんら代わりのないことです。ただ、決定的に違うのは、その市場規模。世の中の注目度。経済に対する影響度。すべてが桁外れに大きくなりました。

Linux普及の可能性

この手紙をくれた友人は業務アプリケーションの開発に従事しています。

(友人)「最近話題になっているLINUXについてなんだが、今後普及すると考えられているんだろうか。マイクロソフトを駆逐し、市場を席巻するようなことになる可能性はあるんだろうか?」

(私)「ある分野、サーバ市場では普及すると思う。Win98とかの端末系はUNIXは広がらない。設定が難しすぎる。NTみたいなサーバ市場ではある程度広がる。理由は、安くて、NTよりも品質が高いから。」

Linuxの適用市場

まず現在の世の中のいろんなシステムを実現している、コンピュータの構成について考えてみましょう。

bullet汎用端末・・・これはみなさんが使っているコンピュータ。(WindowsやMac)
bullet専用端末・・・銀行やコンビニで使う端末。用途専門に開発された端末
bulletサーバ・・・端末から接続され、裏方処理を行うコンピュータ。WEBサーバ。メイルサーバ。
bullet高性能コンピュータ・・・スーパーコンピュータや、メインフレームと呼ばれる、お化けのようなコンピュータ。
超巨大なデータベースや特殊な処理には、こういったコンピュータが使われます。

さて、これらのコンピュータたちがインターネット、あるいは他の通信媒体によって、ネットワークとして結ばれ、全体として銀行のATMシステムや、チケットの予約システムをなします。上記のコンピュータたちは大きく3つのレベルに分けて考える事ができます。1. 端末、2. サーバ、3. 高性能サーバです。Linuxの普及の可能性があるのは、1と2の分野です。

私の意見としては、1. はだめです。WindowsやMacに比べて、あまりにも設定が面倒くさすぎます。いろんな事が出来過ぎて(その多くは一般ユーザにはどうでもいいこと)、かえって使い勝手が悪い。

2.のサーバ市場。これは現在は、IBM, SUN, HP などのUNIXマシンが中心です。後発のWindowsNTがこれに追撃していますが、WindowsNT4.0以降の勢いは多少衰えを見せています。

NTとLinuxの関係

マイクロソフトのNTがのしてきた理由と伸び悩む理由は明確です。

bullet○ 端末Windowsの普及に従って、UNIXより、より親和性の高いNTがサーバとして注目された。
bullet○ ハードウェアとしてPCを用いているため安価なサーバ実現が可能。
bullet× 品質、性能が言われているほど、思ったほど出ない。

NTは、このIBMなど巨人が支配する世界に、鳴り物入りでデビューしました。パソコンにNTというOSを入れただけで、これだけの事ができる。もうUNIXは要らない。とまでいわれていたこともあります。しかし、現在にあっては、UNIXへの回帰が多少進んでいるようにも写ります。理由は前出の品質と性能。カタログだけ見てNTでシステムを組んでみたはいいものの、やっぱり、UNIXに比べると、ダウンしたりすることが多い。そういった事例や評判がNTの最大の障壁になっています。サーバというOSを開発することがいかに難しい問題かということを伺い知ることができます。

さて、Linux盛況の理由もここにあります。Linuxのハードウェアは、PCです。IBMやSUNなどの高性能の、しかし高いマシンに比べて、安いPCは魅力的。しかし、NTでは使い物にならない。。。そこに、いわゆる PC UNIX が注目される理由があるわけです。性能的には、Linuxは、IBMやSUNやHPのUNIXとなんら劣るところはありません。

FreeBSDとLinux

FreeのPC UNIX の代表格としてはLinuxとFreeBSDがあります。なぜFreeBSDでなく、Linuxなのかはよくわかりませんが、ひとつ考えられるのは、Linuxの方がツールの移植が早く進んだ、Linuxのコミュニティの方が、移植に秀でた人材がそろっていた。ということがあげられるかもしれません。

サーバとしての性能面、信頼性では、いまだFreeBSDに一日の長がある模様です。たとえば、yahooのサーバには、FreeBSDが採用されているようです。

普及の障壁

ソースコードもアプリケーションもただ同然で手に入り、しかもWindowsに比べて、信頼性も高く、処理性能も高い。良いことずくめのようなLinuxですが、ビジネスとしての普及にはひとつ大きな欠点があります。それは、誰もサポートしてくれないということ。

ソフトウェアの開発会社というのは、自分たちの専門のソフトウェアを開発しますが、専門以外のハードウェアやOSはもちろん買ってくるわけです。たとえばPCを1台買ってくれば、1年間の無料補償期間があります。さらに3年間システム運用したい場合は、3年間のハードウェア補償契約を結べば言い訳です。これで、安心してお客様にシステム提供ができます。トータルとして値段は高くなりますが、誰も補償しないシステムは商品にはなり得ません。

Linuxなど、Free UNIXの場合。その製品の性格上、誰も責任をとることはしません。問題があったときにどこへ問い合わせればいいのか?これが、今まで Free UNIX がビジネスとして台頭してこなかった最大の理由です。

最近 IBM がLinuxのサポートをサービスとして開始しました。日本でも富士通が名乗りをあげてきています。こういった有償の補償サービスが、今後のLinuxのビジネスとしての普及のキーになってきます。

オープンソース

(友人)「だいたい、俺にはオープンソースなんてのが理解できないんだ。ボランティアみたいな感じで世界中の優秀なエンジニアが改良を加えていくなんて言うけど、なにが彼らをそうさせるのかな。そしてそれを誰がまとめていくのかな。」

(私)「これは、60年代からずーっとあった世界。その筋の研究者、エンジニアは、自分の成果が世の中に認められ、広がり、その業界の人から尊敬され、有名になることに価値観を持っている。結して金ではない。金を求めると逆に、自分のやりたくないことをやらねばならない。それは勘弁。という連中だよ。」

優秀なエンジニア

そもそも、プログラムを作るというのは、本当に高度な知的作業です。プログラム言語を知っていて、最低限のプログラムを作れる人は100人でも1000人でもいるかも知れませんが、コンパクトに高性能で拡張性の高いプログラムを作れる人は、その中に10人いるかどうか。

企業に入って、それなりの研修を受けて、前任者がやっていたプログラムや設計書を受け継いでプログラムを作成していく。それでもうまくできますし、そうやって成果を上げていくしかないんですが、方や、喜々としながら好きで好きでたまらないプログラムに熱中している連中。どちらが品質の高いものを生み出せるかは明白です。

ただ、その「好き者」連中の欠点は、彼らには義務がないですから、予定は立たない。あるツールに熱中してプログラムしていた人間が、大学卒業とともに仕事に従事するために、そのツールの開発が止まってしまう。。良くあることです。しかし、それでも全体としては、60年代から脈々と続くこのアマチュア集団の開発は、マイクロソフトが躍起になって作ったNTよりも優れたOSを排出しているというのが事実だと思います。

価値観の違い

得てしてそういう優秀なエンジニアというのは、好きでやってるわけで、これが金をやるから好きじゃないことをやれといっても、うまく作用しません。金なんかよりも、自分のプログラムの優秀さ、成果、それらが世の中に認められ、自分のソースコードが普及することの方が、何倍もすばらしい。まぁ、それでいて、「かつ」お金が入れば言うことなしと言うところでしょう。

そう、基準は世の中に役に立つ、みんなが便利だと思うものを作る。やり方はとはわない。目の前にあるソースプログラムやスペックを自分の知恵で実際に動作するものに仕立て上げる。そこに価値の基準があるかも知れません。

コーディネータ

全世界の「好き者」たちは、メイルやWebやFTPサーバを通してつながり、コミュニティを形成します。たとえば、あるツールに興味をもった学生は、まずメイリングリストに登録します。そこで流れる様々な問題に対して、「こういうふうに改造してみました。どうでしょう?」とやるわけです。そうすると、誰かが、「私はさらにこう改造してみました。」と、この調子で続く訳です。それらのソフトはすべて、WebやFTPサーバで更改されます。

この調子でやってると収拾が付かなくなるのも事実です。どのバージョンが一番最新のものか、よくわからない。。そこで、コーディネータと呼ばれる「とりまとめ担当者」なる人が出現します。

「これこれに関しては私がとりまとめて公開します。」

ボランティア方式です。Linuxなど、大規模な場合は、こういったコーディネータが集まって(これまたメイルなどでオンラインで集まるのですが)、Core Team というのを形成します。このCore Teamが中心になってテストやデバッグ、バージョン番号付与、パッケージング、リリースといった作業が進むわけです。

オープンソース = ビジネスモデル?

このオープンソースというやり方こそが、Linuxの持つ最大の武器である。とは、新聞等で良く耳にする言葉です。が、果たして本当にそうでしょうか。このオープンソースというやり方、少なくとも私の知る限り、10年前にもすでに存在していました。当時Linuxはありませんでしたが、その元となるUNIXや、X-Windowシステムや、Emacsなどは、この方式で開発が進んでいました。

しかし、そこにビジネスモデルはありませんでした。金儲けには使えなかったのです。確かに、「補償」や「更改」のサービスをビジネスにする会社はいくつかありました。大元のプログラムは無料ですが、どのバージョンが一番安定しているかという情報を集めたり、しかも毎月のように繰り返されるバージョンアップに追従するのはそれだけで大変な作業です。その部分だけを請け負い、ビジネスにするというパターンはありましたが、こういった超分散開発そのものが、ビジネスモデルとしてどう確立していくのか。今のところ私には予想がつきません。

Linuxに関して言えば Red Hat がディストリビュータとして、確固たる地位を築き始めています。様々な期待と憶測が彼らに資金を与えます。彼らは主にパッケージングと、流通に関して商売をしているわけですが、このままLinuxが普及していけば、たとえばRed Hatがバージョンアップ料を課したり、またユーザもそれに従わざるを得ないといった状況が考えられなくもありません。さて、先述の通り、この超高度な技術を支えている優秀なエンジニアというのは、ビジネス(金)からの乖離にこそその安住の地を見いだしていたとも言えます。Red Hat が何を考えているかは知る由もありませんが、彼らが遠のいていくような環境にはならないでいて欲しいものです。少なくとも今まではそれでうまくいっていたのですから。

 

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Last Updated:11/24/01