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Microsoft (3/26/99)

マイクロソフトの反トラスト法問題。これに関するセミナーが開催されました。私のとっているクラス(R&D Management)の担当教授を始め、法律の観点から弁護士、スモールビジネスの観点からインキュベーターセンターのディレクター、大会社のコンサルタント、など、様々なプロフェッショナルを交えてパネルディスカッションが行われました。

こちらアメリカでもずいぶん話題になっています。いろいろ意見があって、どういう意見が支配的というのはないですが、マイクロソフトの度重なる証言、証明の失態(Windowsの価格が2000ドルでもおかしくないといったり、実際のコンピュータを使ったデモが汎用性に欠けていたとか)は世間から嘲笑されているように見えます。残る問題はもうマイクロソフトがいつどう処理されるか?だという記事も見ます。

今回のパネルディスカッション。講堂は定員300名くらいの場所ですが立ち見がでるほどの盛況ぶり。パネルディスカッションといっても日本のように「お行儀」のいいもんじゃぁありません。他人がしゃべっているところに割って入ってくるわ、OHPプロジェクタにでかい字で汚い言葉は書き並べるわ、まぁ、とはいえ、みな杓子定規な建前ではなく、本音で、議論してましたし、聴講していた学生も本気で質問をします。

最終的には、「マイクロソフト分割」というシナリオを例にとって、賛成と反対で全員投票。結果は最後に回すとして、その、今回のマイクロソフトの問題を一部のマスコミのような切り口ではなく、すこしアカデミックな切り口で冷静に本音で考えてみる。そういういい機会でした。

ちなみに私は、Windows98ユーザですし、NetscapeよりもIEを好んで使っています。便利で使いやすいと思います。でも根は、UNIXベースのエンジニアですし、未だにEmacsが最強の環境だと信じています。^^;

Antitrust History

反トラスト法の裁判というのはなにもマイクロソフトの件で始まった訳ではありませありません。過去にも大きく3回、

1950年代、 GE Power System, Westinghouse, Allis-Chalmers

日本でいうところの談合というやつで、経営者たちは逮捕。GEは撤退。という結末でした。

1960年代、コンピュータサービスにおけるIBMとその7人の小人たち

7人の小人とは、GE, RCA, Honeywell, XEROX, NCR(AT&T), UNIVAC, BURROUGHS です。政府介入の結果として、ソフトウェアのアンバンドルが進み、数社(GE, RCA, Honeywell, XEROX)は業界から消えてなくなり、UNIVACとBURROUGHSはUNISYSに生まれ変わりました。

1980年代、まだ記憶に新しい、通信業界、AT&T分割です。

ベビーベルと呼ばれる地域会社、長距離会社、R&Dと製造を受け持つLucent Technology など、合計28の会社に分断されました。通信の分野が Monopoly から Diversity へと変遷を遂げる大きなきっかけになった事件でした。

さて、今回のPlayerは?ズバリ、マイクロソフト、ネットスケープを買収したAOL、それからSun Microsystems。これらの会社の関係が大きな鍵になってきます。

まとめ。歴史から学べる点。以下の3点です。

bullet大成功を遂げると必ず政府からアンチトラストのターゲットにされる。:-p
bulletマイクロソフトの件が最初ではないし、これで最後というわけでもない。
bulletアンチトラスト審議の結果は全世界的規模で産業に影響を与える。

なぜマイクロソフトが成功したか

市場の絶対法則

マイクロソフトの成功。それは異様に高いROIに表されます。実に31%(1998)という値。それから高騰を続ける株価。一部の人は評価されすぎと見る向きもあります。

1998年度の世界の大企業ランキング

順位 会社名(国) 市場価格(株価)
(billions)
1997 売上
(billions)
1998 1995
1 3 General Electric (US) $272 $91
3 20 Microsoft (US) 209 11
4 2 Royal Dutch/Shell (Neth./UK) 196 134
5 6 Coca-Cola (US) 194 19
13 14 IBM (US) 111 79

$11billion (約1兆1千億円)の売り上げしかない会社が、13兆円のShellよりも高く、そして、あのBig BlueといわれるIBMの倍の市場価格を持っているというのには驚きです。

マイクロソフトの歴史。それはBill Gatesの歴史でもあります。1956年生まれ。1970年に会社設立。74年にBASIC開発。75年にハーバード大学をドロップアウトしてAllenとマイクロソフトを設立します。

Bill Gatesの戦略の根本。これは、1年半でコンピュータパワーが2倍になるという有名なムーアの法則(Moore's Law)と、コンピュータコストはパワーの平方根分の1に比例するというGrosch's Lawに則っています。

image6.gif (1160 バイト)

(3/20/99追記:このGrosch's Law に関して間違いではないかとのご指摘を頂きました。詳細はこちら)

つまり、ハードウェアは将来とてつもなく安く高性能になる、またPCマーケット飛躍的に延びるはという前提に立ったとき、コンピュータソフトは必然的に不足・枯渇するというところに自分たちの存在意義をおいた訳です。(Computer Software will become the Scarce Resource !)

まぁ、しかしそれくらいは誰でも思いつくところでしょう。実際、60年代70年代、そして日本も80年代からPC目当てのソフトハウスは百花繚乱状態だったわけです。

基本戦略

しかし、1980年代に入ってからのBill Gatesの戦略には目を見張るものがあります。

bulletアグレッシブで若い技術者を雇う
bulletマネージメント領域には、賢い古狸(失礼^^;)を海外やライバル会社から引き抜く
bullet罵声ミーティングと煽動メイル(Yelling Meeting and Flame Mail)
bullet新規プロダクトはBill ミーティング

つまり、会社はどんどんでかくなっても、妙に効率を追いかけるのではなく、小さい企業の雰囲気をそのまま維持しようとしていたのです。

商品戦略

そのほかにも、商品戦略に関していえば、

bullet世界標準戦略
bullet顧客をアップグレード漬け(古いバージョンを見劣りするように仕立てる)
bullet他のプラットフォームからソフトを持ってきて一般化してしまうという手法
bullet2番煎じで金儲け(最初にやると儲からないというIBM PCからの教訓)
bulletピカソ(よい芸術家は模倣をするが、偉大な芸術家とは「盗む」ものだ:-p)

など。一見簡単なようですが、業務の過程でこれらを徹底するのはかなり大変だったでしょう。汚いとか、なんとかいろいろいわれますが、とにかく Make Money の観点では、Bill の商品戦略はしっかりしたものだったわけです。

マーケティング

次はマーケティング戦略。

bulletまずOEM。それから小売り
bulletまずIBM。それからAppleその他
bullet継続的にやる!ということ。アイデア発表、デモ、受注、開発、発売、
(たとえ完璧じゃなくてもバグはあとで直せという姿勢)
bulletOEMにはボリュームディスカウントで大量受注を

Bill Gates の役割

さてこのBill Gatesという男、あまりにマイクロソフトの顔として有名すぎますが、その実、会社に対する役割としても、かなりな権力を持ち続けているようです。

bulletGeneral Manager

この部分は突起すべき事はありませんが、ひとつ。ミスを修正する勇気をもっていたということ。インターネット戦略のことです。

bulletAs Technical Leader

Bill Gatesが、その技術力よりも経営的センスにおいて評価が高い、そもそも実業家としての力量に優れている。という見解はいまとなっては珍しくありませんが、それでもなお、IBMが4,000行かかって書いたプログラムをGatesが400行で書き直したなど、プログラミングにおけるGatesの功績が神話として残っているというのは、技術集団としてのマイクロソフトを率いていくのに好都合に働いたと言えるでしょう。また、彼はキーパーソンの人事権も持っています。必要に応じて、技術者の配転を意のままにできるわけです。

品質に対する割り切り。完全でなくともリリースする。後でパッチを流す。低い品質のマイクロソフト製品は、逆に、こういうやりかたをビジネスのパターンとして定着させた、ともいえると思います。

bulletAs Salesman

口約束をたくさん行い、リリースをのばし、、、つまり、結果的に他の会社がマイクロソフトを頼る、依存せざるを得ないような構造を作り出していたと言えます。

bulletAs Personnel Manager

とにかく若くて優秀な技術者を選ぶということ。これは、有名大学のコンピュータサイエンス学科から成績優秀な人間を集めてくるということです。"Green kids are easier to motivate" もはや洗脳と呼んだ方がいいかもしれません。欲しいのは若い人間のコンピュータ技術。プレーンな新卒の方が洗脳しやすいというわけです。

ライバル会社よりは給料は低いそうです。しかし、15%にも及ぶボーナスや(アメリカの会社に普通ボーナスはありません)、様々なストックオプションで厚遇します。これらは、Golden Handcuffs(金の手錠)と呼ばれます。

bulletAttacking the Future

世界標準、デファクトスタンダード重視。常にデファクトスタンダードに十分な品質。これがマイクロソフトの明確なクライテリアです。

ネットスケープの終焉

AOLに買収されてしまった今となっては、ネットスケープはマイクロソフトがいかに「のしてきたか」の語り口となってしまいましたが、今回の法廷でも、ひとつの大きなキーであることは間違いありません。

問題は、ブラウザ開発において後発であるマイクロソフトが、このネットスケープに対して「いかにふるまってきたか」です。

みなさんご承知の通り、ネットスケープは、ブラウザ市場においてパイオニアでした。1995年時点では、マイクロソフトの追従をも許さない、確固とした地位を持っていました。

UNIX業界では当たり前とされていた、多数のベータ版で機能向上、バグ修正を行っていくというやり方、Plug-insという拡張の仕組み、、、

しかしマイクロソフトは1996年当初、大々的に方針転換し、インターネットにフォーカスした戦略を打ち上げます。「インターネット戦略」。これを機に、ネットスケープの株価は一時5分の1にまで下がります。それにもまして、なにを血迷ったか、ネットスケープの創始者であるAndressenたちは、1996年春に株を売り渡しています。

マイクロソフトの株価は、Windows95の爆発的ヒットなども含め、右肩上がりで延びてきています。そして、1997年度の決算。ネットスケープが$88Mの赤字を計上したところで、ゲームは「The end」。それ以降、ブラウザ戦争(少なくともビジネスとしての)はマイクロソフトの勝利に終わり、株価の上昇に勢いが付くことになります。

反撃体制

マイクロソフトのネットスケープに対する反撃。それは容赦のないものです。インターネット戦略を発表した1995年末から、InternetExplorer 3.0 が発表になるまで、たった9ヶ月。この間に彼らは、総力を結して、ネットスケープ抹殺をはかったのです。

  1. ベータリリースという、ネットスケープのやり方をまねした。
  2. そしてそれは、リリースサイクルを従来より引き延ばした、より統制のとれたものだった。
  3. を持っていた。
  4. マイクロソフトという強力なブランドイメージを持っていた。
  5. 優秀な人材を山ほど抱えていた。

いろいろ理由はあります。ベータリリースというのは、旧来のUNIXやインターネットの世界では当たり前のやり方で、ネットスケープもこれに習って、ユーザフィードバックや、バグフィックスを行っていました。マイクロソフトもこれを例のごとくにこれを、まねします。

そうです。最近はやりのキーワードですが、「オープンソース」の最大の欠点は、ここにあります。「敵にすべてが知れ渡ってしまうこと」。

ユーザからみれば、「あのマイクロソフトがブラウザに本腰をいれ始めた。。」という印象があったでしょう。これこそブランドイメージです。もちろん有名がためにアンチマイクロソフトもいると思いますが、いずれにせよこのイメージは、ぽっと出のベンチャーにはまねのできない強力な武器でした。

人材。金。もてるものの強みです。実際、このExplorer 3.0 のプロジェクトはそうそうたるメンバーで鬼のようなスケジュールだった模様です。Job List という、社内求人広告でプロジェクトを構成するのですが、(これが、本来のプロジェクトです)、レベル14以上(内部階級の呼び名)のエンジニアで、過去に製品を3つ以上リリースしたことがあって、マイクロソフトに5年以上勤めている人間。。。実績、経験を重視した募集。そりゃぁ、どの会社だってそういう風に募集したいでしょうが、そんなに優秀な人間はたくさんはいません。ところが、マイクロソフトにはいたみたいです^^;

AOLによる買収

AOLによるネットスケープの買収は、ひとつの時代の終焉の合図でもあり、次の戦争の開始の合図でもあります。ブラウザのシェアを見てみましょう。

ネットスケープ 42%
AOL(IEコンパチ) 16% 43%
Microsoft IE 27%
その他 15%

1998年11月現在のデータです。依然ネットスケープの優位は揺るいでいません。これは、特に初期のころからブラウザを導入してきた企業ユーザがなかなかマイクロソフトに乗り換えないのがその大きな理由です。一般コンシューマ市場では、もう少しマイクロソフトのシェアが大きいはずです。

さて、それでもAOLのブラウザと会わせると、42% 対 43% ということになり、互角の戦いというところですが、AOLがネットスケープに乗り換えるということになると、

ネットスケープ 42% 58%
AOL(IEコンパチ) 16%
Microsoft IE 27%
その他 15%

ということになり、勢力図は大きく書き変わることになります。これにもまして、AOL陣営には、中規模ネットワーク市場で絶大な存在感を放つSun Microsystems がいます。

新しい戦争

全世界1800万人とも言われるAOL会員数。そこまでのばしてきたコンシューマビジネスのノウハウ。ネットスケープのブラウザ技術力。そして、Sunのサーバを含めたネットワーク力。協力な陣営に写ります。

対して、パソコン市場の90%シェアを握り、他社メーカがあえぐ中、一人勝ちを続けるマイクロソフト+インテル陣営。

この新しい戦争の第1段は、1999年4月に公判再開が予定されている、マイクロソフトアンチトラスト裁判の結果が大きく左右するのはいうまでもありません。

シナリオはいろいろ言われています。マイクロソフトは分割すべきだとの意見もあります。SUNのスコットマクネリはマイクロソフトの分割には強く反対しています。

OSとアプリケーションとネットワークを分けたところで、それぞれの分野でマイクロソフトが従来通り汚い手でのしてくるのが分かり切っているから。

というのがその理由です。

しかし、いずれのシナリオを採択するにしても、究極の問題は、

どうするのが、全世界のコンピュータユーザにとって有益か?

ということです。パソコンとインターネットはすでに全世界的な社会基盤に育ちました。ある一社の戦略の都合でのみ語られるには、あまりに世の中がマイクロソフトに依存しすぎています。

質疑と投票

ある学生は意見します。

「31%のROIのどこが悪いの?それは、独占力じゃなくて、Windowsという技術革新に対する市場の評価だわ」

「Windowsの独占!?ああ、独占だね。だが、それのどこが悪い?ユーザはみんな利益を被ってるじゃないか。」

そうなんです。忘れてはいけないのは、いろいろいわれても、Windows95という製品が、業界に革新を起こして、多くの人間がその利を被っていると言うこと。インターネットビジネスという、アメリカ全体の経済力をも牽引しうる強力な力を生み出したということ。

「いや、問題なのは、彼らの成果じゃなくて、そのやり口だよ。とにかく彼らは汚いのだ、やり方が。」

「競争によってのみ健全な経済が育つ」

レーガノミックスという言葉があります。規制を緩和して、イコールコンディションの元で競争を促す。それがなによりも有効な手段である。実際、アメリカ経済はどん底の80年代から世界唯一の経済大国にまで復興してきて、その有効性は証明されているではないか。マイクロソフトに対する心象がその意見を後押しします。

確かに、どちらの意見ももっともなのです。裁判の細かい事につっこめば、マイクロソフトの負けはもう見えてきています。口げんかでは、政府側の勝ち。でも、本当の問題はそうじゃなくて、じゃぁ、マイクロソフトをどう処理するのか?という点です。

最後に、講堂に集まった人間全員による挙手による投票を行いました。

マイクロソフト分割に賛成か?

結果は、43対37で、賛成多数。この数字が、今のアメリカのマイクロソフトに対する憂鬱を表しています。

#ちなみに、私は反対に投じました。理由はスコットマクネリと同じです。

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Last Updated:11/24/01